“AIの旗手”として君臨するNVIDIAの現在地。コンシューマ向け発表はほぼゼロ
NVIDIA Corporation(本社:アメリカ・カリフォルニア州)は2023年5月29日、開幕を明日に控えたCOMPUTEX TAIPEI 2023に合わせ、CEOのジェンスン・フアン氏による基調講演を行った。主にAI関連の新技術が解説され、スーパーコンピュータ向けモジュールの
「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」やスーパーコンピュータ
「NVIDIA DGX GH200」が発表された。
「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」は、ArmベースのNVIDIA Grace CPUとHopper GPUをNVLink-C2Cインターコネクトで統合した、生成AIおよびHPCアプリケーション向けモジュール。CPU側は最大512GB、GPU側に96GB HBM3の大容量メモリを搭載するほか、総帯域幅はPCI Express 5.0レーンの7倍にあたる最大900GB/sに達する。今回の基調講演において正式発表、本格生産の開始がアナウンスされた。
また、「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」を搭載するAI向けスーパーコンピュータ
「NVIDIA DGX GH200」も発表。合計256基の「GH200」を結合して単一GPUとして扱うことが可能で、「DGX A100」のほぼ5倍にあたる144TBの共有メモリ、1EFLOPSのパフォーマンスを実現する。生成AIやLLMのような巨大モデルを用いて演算するAI処理において、ボトルネックになっているメモリ容量の制限を解消する。
そしてCPU・GPU・DPUを筐体内にモジュール配置するラック型サーバーの標準規格
「NVIDIA MGXアーキテクチャ」を発表。ASRock RackやASUS、GIGABYTE、SupermicroもMGXを導入する予定で、MGXデザインのサーバーはSupermicroなどから8月に登場する。MGX採用により開発コストは最大3/4、開発期間を2/3程度に圧縮できるという。日本ではソフトバンクが生成AIと5G/6G向け次世代データセンターでMGXデザインを導入する予定とのこと。
そのほか、生成AIがゲームのNPCとの自然な会話を可能にする
「NVIDIA ACE for Games」など、発表はほとんどがAI関連。コンシューマ向け製品としては、直近の成果として冒頭にてGeForce RTX 4060 Tiが紹介されたのみに留まった。
これはAI機械学習向けのGPUコンピューティングで圧倒的なシェアを獲得し、“AIの旗手”として躍進するNVIDIAの現在地を示すものと言える。これらAI向け半導体技術の成功により、NVIDIAの時価総額は1兆ドルに迫る世界7位にランクインしたことが先日報じられたばかりだ。