マザーボード開発の楽しいところはどこでしょう?
PMの立場としては、将来的なトレンドや市場の状況を見て新製品を計画するのが仕事です。皆で考えたアイデアが盛り込まれた製品がセールス的に成功するのを見届けるのは楽しいですし、次の製品開発に対する意欲も高まりますね。
台湾本社のマザーボード部門にはどれくらいのスタッフがいますか。
トータルで約1,000人です。そのうち約700名ほどがエンジニアチームでその他がマーケティングやセールスのチームになります。
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AMD系とIntel系マザーボードでは担当者や開発チームが異なるのでしょうか。
エンジニアはAMD系とIntel系でチームが分かれていますが、その他は基本的に変わりません。
ラインナップはROG、TUF、PRIMEなど多岐にわたりますが、それぞれに開発チームがあるのでしょうか。
あくまでマザーボード部門の話になりますが、ROGはASUSのフラグシップということもあり、独立したチームです。そのほかTUF、PRIMEなどのシリーズは、まとめてひとつのチームになっています。どのチームにもベテランの開発スタッフが配属されています。
2022年の後半はマザーボードの新製品が多くリリースされましたが、必ずしも発売スケジュールについては順調ではありませんでした。遅延した理由を教えてください。
工場側の生産スケジュールの遅れが原因です。私がASUSに入社して以来初めてといってもいいと思いますが、AMDとIntelのメインストリームチップセットがほぼ同時期にリリースされました。それだけでも異例の事態といえますが、ASUSの品質基準は厳しく、デザインから試作品の開発と工場の生産テストなど多数の項目をクリアして初めて出荷となります。もともと、どちらか一方の新製品だけでも多くのリソースを使いますが、AMD X670E/X670/B650、Intel Z790と実に多くの新製品を扱う必要がありました。すでに工場の生産ラインは逼迫した状況でしたが、そこにきて中国の予想外となるロックダウンと10月からの大型連休が重なり遅延してしまったというわけです。
AMD、Intel問わず新型マザーボードの価格が非常に高騰しています。理由を教えてください。
チップセット機能の大幅なスペックアップはひとつの原因だと考えています。PCI Express 5.0やDDR5メモリの対応など新世代ならではの機能が増えました。またCPUのプロセスルールもより微細化されスペックも向上しましたが、それにともない電源周りをはじめとしたマザーボード側の部材強化は欠かせない要素となっています。高品質なパーツを採用せざる得ない状況です。加えて昨今世界的に問題となっている電子部材の価格高騰の影響も大きいでしょう。
メーカーとしても価格が高いと感じていますか。
価格については社内でも「高い」という意見は少なくありません。開発段階から「これは必要だがこの機能は省こう」と何度も意見を出し合い試行錯誤を繰り返しました。一方で、簡単に機能を削れないという問題があります。AMDまたはIntelから最低限必要だとされるスペック基準があり、そこは準拠しなければならない。もうひとつは、ユーザーから「ASUS製のマザーボードはスペックが高くなければならない」という要望があるからです。それでも価格が上がってしまうのは、メーカーとしても悩ましい問題だと思っています。
マザーメーカーのトップブランドとして長年君臨している理由はどこにあると思いますか。
ASUSがマザーボードで一番大切だと考えているのは
「安定性」と
「互換性」です。製品開発では常にその点は意識しています。またエンドユーザーの視点から見て、どのようにデザインしたら喜ばれるのかという点も常に考えています。また、ROGを筆頭にハイエンドからエントリークラスの製品までラインナップを網羅している点も強みだと言えるでしょう。予算や好みに応じて、どのラインナップからでもユーザーが選択できるようにしています。さらに私個人の意見ですが、シリーズコンセプトに沿った基板デザイン、傾斜角度までこだわったヒートシンクデザインなどのこだわりも是非見て欲しいところです。
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ASUSのマザーボードにはオリジナル機能が多いですが、グラフィックスカードがワンプッシュで容易に取り外せる独自機構
「PCIe Slot Q-Release」は特に好評です。開発の経緯を聞かせてください。
ハイエンドグラフィックスカードの取り外しは、弊社も長年悩まされていたポイントです。ロックを外す際にドライバーや鉛筆などを使う人も多く、破損の原因にもなっていました。そこで改良しようという話になり、マザーボードの開発チームだけでなく、さまざまな部署のスタッフに参加してもらい、まずは試作品を作りました。その後、実際のマザーボードに搭載し利便性の高い機能である点を確認。製品化にいたりました。開発には約1年かかりましたが、ちょうどグラフィックスカードの大型化も進んだ時期だったので、非常に有用な機能になったと思っています。
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| グラフィックスカードサイズが大き過ぎてセキュリティロックに手が届かない場合でも簡単にグラフィックスカードを外すことができる「PCIe Slot Q-Release」 |
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| ボタンを押すとロック部分に接続された金属ワイヤが引っ張られ、セキュリティロックが外れる仕組み。「PCIe Slot Q-Release」の大きなサンプルを作って試行錯誤を繰り返したと言う | |
話に出たグラフィックスカードの大型化ですが、最近は特に顕著になっています。マザーボード開発にも影響ありますよね。
はい。すごく困っています(笑)。グラフィックスカードは表面だけではなく裏面のバックプレート側の厚みまで増しているため、x16拡張スロットの位置を下方向に調整することで対応しています。ただ、そうなるとさらに下の拡張スロットやM.2スロットのスペースも狭くなり、デザインするうえで大変苦慮しています。グラフィックスカード部門まで行って相談もしたのですが「GPUの発熱が高く、VGAクーラーを小型化するのは難しい。そもそもNVIDIAのリファレンスデザインが3スロット仕様だ」と言われてしまいましたね。こればかりは仕方がありません。
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| ASUS「ROG Strix GeForce RTX 4090 OC Edition 24GB GDDR6X」を「ROG MAXIMUS Z790 HERO」に搭載したところ。近年特に顕著なグラフィックスカードの大型化はマザーボード開発にも大きな影響を与えている | |
始めてGeForce RTX 4090を見た時の感想は?
と思いましたね、だって隣接するスロットは使えないんですから(笑)。厚みだけではなく長さもあるので、隠れてしまいそうなピンヘッダの位置調整も大変だなと思いました。
グラフィックスカード用スロットは以前よりさらに強化されているのでしょうか。
最新の「SafeSlot」では、周囲をメタルシールドで補強するだけでなく、プラスチックのスロット部分も金属で補強しています。またPCI Express 5.0(x16)スロットは配線を最小限にするため表面実装技術を採用しています。
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| 従来のスロットからさらに強度が上がっているという「ROG STRIX Z790-F GAMING WIFI」のPCI Express 5.0スロット |
各社の大型グラフィックスカードにVGAステイが付属(または使用を推奨)していますが、GeForce RTX 4090クラスのカードでは必須でしょうか?
通常使用であれば、破損しないように設計されています。ただし輸送をする場合には、思わぬテンションがかかることも予想されますので、取り付けて欲しいと思います。