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マウス開発における自信と難しさ、Endgame Gearならではのこだわりについてさらに聞く
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- 編集部
それほど待たずに新モデルを目にすることができそうですね。ちなみにこれまでEndgame Gearとして複数の製品をリリースしてきたことを踏まえて、マウス開発において自信を持っているポイントはどこでしょうか。
- Jonas氏
我々には特許取得済みのコンタクトアルゴリズムがあったりなど、高い技術には自信をもっています。開発にあたって社内で膨大な検証を行っており、それに裏打ちされた品質の高さもそう。それと無数にある中華系のメーカーからよくコピーされることからも、トレンドセッター(トレンドを作る側)になっていると感じています。
- 編集部
それでは逆に、マウスの開発・製造において現在難しいと考えていることを教えてください。
- Jonas氏
ハードウェアの面で一貫性をもたせることには、以前から難しさを感じています。分かりやすいところではスイッチですね。基本的にスイッチの仕様は60±15gfのようにある程度幅があるのですが、上限と下限(45~75gf)ではまったく別物になってしまいます。
そのため我々は、かなり厳密にスイッチの仕分けを行っています。55gfだったり60gfだったり、欲しいところだけをピックアップして使うわけです。そのため仕入れたスイッチの40%ほどは使えなくなってしまうのですが・・・コストはかかっても、譲れない部分なのでこだわっていますね。
- 編集部
品質を維持するために、必要なコストはしっかりかけているということですね。ただ近年ゲーミングマウスが高価格化する傾向がある中で、Endgame Gear製品は手頃な価格で、むしろコストパフォーマンスが高い部類だと感じます。このあたりはどうやって実現しているのでしょうか。
- Jonas氏
確かにスイッチの仕分けなど、お金がかかる部分はあります。ただ我々は、こうしてかかった原価とマーケットにおける最適な価格バランスから割り出した、正直な価格で勝負しているというのが本音。新製品だから高くし設定しつつ、しばらく後の価格改定も計算に入れたりといったことはありません。
もちろん“ブランド税”のようなものを入れる考えもなく、原価をベースに製品に相応しい価格をストレートに設定しているというわけです。作っている我々自身もゲーマーですから、購入者たるゲーマーに“オーバーチャージ”を課すことに罪悪感もありますからね。
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価格にも重要なメッセージがある?ゲーミングマウスはどうあるべきか、という話には熱がこもる
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- 編集部
近年のゲーミングマウスと言えば、どんどん軽量化が進んでいますよね。こうした傾向に関して、Endgame Gearはどのような考えを持っているのでしょうか。
- Jonas氏
個人的にマウスにはある程度の重量が必要だと感じているのですが、加速する軽量化のトレンドについては敏感に意識しています。そのために必要な新素材の開拓やデザインなど、研究は常に行っていますよ。
ただ他社製の軽量マウスについての検証も行っているのですが、我々独自のテスト方法でのチェックをクリアできない製品も少なくありません。使い始めて2週間くらいで剛性に違和感が出るモデルもあったり。そういう場合は、軽量化のためだけに強度を半ば度外視した素材を使っていることが多いですね。
- 編集部
技術や素材に裏打ちされない軽量化では意味がないということですね。軽さについての優先度はそれほど高くないということでしょうか。
- Jonas氏
その通りです。そもそも軽量化を極めることが最終的なゴールではないですし、実際eスポーツのトーナメントでも全員が軽いマウスを使っているわけではありません。
我々の考えでは、まず一番に重要なのは形状で次は技術的なパフォーマンス、その後にクリック感や重量ということになります。それぞれはトレードオフの関係になることも多いので、そのバランスをどう取るかがマウス開発の難しさですね。
- 編集部
先ごろリリースされた、Endgame Gear初のキーボードである「KB65HE」についても興味があります。どのような経緯で開発に至ったのでしょうか。
- Jonas氏
これまでマウス専門でやってきた中で、ユーザーから「キーボードはやらないの?」という声を多くもらっていたんです。そうした背景がありつつ、キーボードメーカーのDuckyが同じグループになるなど、開発のための環境も揃ってきました。ラピッドトリガーの技術が手に入って、さらにCNC削り出しの素材も安く仕入れられることになったりと、うまくタイミングが噛み合ったというのもありますね。
【関連記事】COMPUTEX:Endgame Gearからキーボード初登場。ホール効果磁気スイッチにラピッドトリガー対応(2024.06.11 14:59 更新)
- 編集部
ゲーマー向け特化のキーボードということで、開発にあたってのこだわりなどがあれば教えてください。
- Jonas氏
昔はゲーミングキーボードと言えば光っていることが重要でした。もちろんそうした要素も変わらず大事なのですが、いま最もゲーマーに求められているのはラピッドトリガー。純粋なキーボード愛好家の方は、何よりタイピングフィールやそれを向上させる設計を重視するところ、ゲーマーの場合は少々評価ポイントが違っている印象です。それとスイッチタイプも、ゲーマー向けの製品はかなりの割合でリニアタイプが好まれていますね。
- 編集部
最後にEndgame Gearの製品を愛好しているユーザーと、これからEndgame Gear製品を手に取ろうと考えている人たちに対して、コメントをお願いします。
- Jonas氏
まずユーザーの方々に対しては、Endgame Gearのマウスを好きになってくれてありがとうと感謝したいです。それと同時に開発を行う側として、ユーザーによるフィードバックが非常に助かりますので、これからも製品を使い込んでその声を寄せてほしいと考えています。
また、まだ使ったことがない方々にとって、Endgame Gearはマウスブランドとしては大きくない、どちらかと言えばニッチな部類に入る存在かもしれません。ただ製品の開発と製造には、どこにも負けないこだわりと技術をもっています。まずは製品を試してもらえれば、我々の製品を好きになってもらえるのではと思いますね。