GeForce RTX 3080 Ti用に改良した水冷システム
次に内部構造の詳細を見ていこう。「G-Master Hydro」シリーズ最大のトピックといえばデュアル水冷システム。中でも注目は、GeForce RTX 3080 Tiにカスタマイズされているグラフィックスカードの水冷化だ。冒頭でも触れた通り、GeForce RTX 30シリーズ用に開発された水冷ユニット「Hybrid GFX 240mm LCS」をさらに改良している。水冷化にあたりキモとなる部分ということで、短い時間ながら「G-Master Hydro」シリーズの生みの親であるサイコムの
プロダクトマネージャー山田 正太郎氏に話を聞いたのでここで紹介したい。
- 編集部
GeForce RTX 3080 Tiを採用するにあたり「Hybrid GFX 240mm LCS」に改良を加えたと聞きました。
- 山田氏
GeForce RTX 30シリーズがデビューした当時はGPUの発熱ばかり気にしていましたが、発売後、数カ月経ってどうやらビデオメモリの発熱も高いらしいということが分かってきました。そこでGeForce RTX 3080 Tiの登場後すぐに検証を開始。Asetekに特注した「Hybrid GFX 240mm LCS」をベースにしつつ、解決策をいろいろと考えました。
|
|
サイコムのプロダクトマネージャー山田 正太郎氏。話を聞くべく、埼玉県八潮市にある組み立て工場にお邪魔した
|
- 編集部
具体的にどのような対策をしたのでしょうか。
- 山田氏
従来の「G-Master Hydro」シリーズは、グラフィックスカード側にブロアーファンタイプを採用していたところ、今回は3スロット厚の3連ファンクーラーを備えたモデルをベースに水冷化を施しています(詳細については、30分で聞いた、サイコム独自水冷GeForce RTX 30シリーズ開発秘話を参照)。GeForce RTX 3080 Ti自体の冷却は問題ないのですが、GDDR6Xメモリの冷却まで考えるとやや力不足。そこで考えたのが、GPUとビデオメモリを一体で冷却する銅板でした。
|
|
GPUとビデオメモリを一体で冷却する銅板。製造は長年にわたり同社と協力関係にある長尾製作所が担当した
|
- 編集部
これはサイコムで作ったのですか。
- 山田氏
設計は弊社の開発担当者が行い、製造は長尾製作所に依頼して作ってもらいました。
- 編集部
さながら「Hybrid GFX 240mm LCS」Version 2といったところですが、これならGeForce RTX 3080 TiとGDDR6Xメモリを同時に冷却できると?
- 山田氏
はい、まったく問題ありません。実際に計測しましたが、温度はGPUが70℃台、GDDR6Xメモリが90℃前後に抑えられています。今回も大変でしたが、いいものができ上がりました。Asetekのスタッフには「そこまでやるサイコムはクレイジーだ」と驚かれましたけどね(笑)。
以上の話を踏まえて、改めて「G-Master Hydro X570A II」を眺めてみよう。240mmラジエターを採用する「Hybrid GFX 240mm LCS」は、よく見るとヘッド部分とGPUの間に特注の銅板が挟みこまれているのが分かる。これによりGPUの周囲に配置されたGDDR6Xメモリを冷却。最大限のパフォーマンスを引き出すことに成功している。
なお、冷却ファンには、静音性を重視するためNoctuaの120mm径ファン「NF-A12x25 ULN」を2基搭載。回転数は1,200rpm、ノイズレベルはわずか12.1dBAというスペックで「静音性を確保しながらも1,600rpm前後の標準的なファンと遜色ないパフォーマンスを発揮する」(山田氏)という。
|
|
|
240mmラジエターはケースフロント側に配置。冷却ファンに採用されるNoctuaの「NF-A12x25 ULN」は、自作派御用達のハイエンドファン。このあたりは実にサイコムらしいパーツチョイスだ
|
また、ヘビー級の水冷仕様グラフィックスカードを支えるため、オリジナル設計のサポートステイを標準装備する。スロットの破断に加え、輸送中のカード脱落を防いでくれる。
|
|
グラフィックスカードを下支えする、サイコムロゴ入りのオリジナルサポートステイ。拡張スロットを利用するため、目立たないというメリットもある
|