技術の粋を詰め込んだ
Noctuaの集大成である「NF-A14x25 G2」。ここまで開発にまつわるエピソードや、スペックシートの内容を中心に解説を行った。そして最終セッションでは、よりテクニカルな部分に踏み込んでいく。

ハイエンド空冷クーラー「NH-D15 G2」の検証記事で、搭載ファン「NF-A14x25r G2 PWM」(ラウンド形状)については解説済みだが、待望の量産モデル「NF-A14x25 G2」(スクエア形状)の製品サイトには、各項目ごとの詳細が記されている。多くのメーカーでは開示しない「技術資料」を惜しみなく開示する姿勢はNoctuaらしく、グラフや図説をふんだんに使った内容は、信頼感の獲得に直結している。 ここで取り上げる内容は一部抜粋(または要約)したもので、より深く冷却ファンについて知りたい場合は、各モデルの製品サイトからひも付けられた資料に目を通して頂ければと思う。Noctuaの冷却ファンを知る事で、決して安価ではない理由が分かるだろう。最後に気になる
chromax.black versionのNF-A14x25 G2シリーズについて触れておくと、最新のロードマップ(2024/10)によると2025年Q1のリリースでスケジュールされている。その前にNext-gen 120mm fanのデビューもあるようだ。
NF-A14x25 G2シリーズは、空気力学的設計(aerodynamic design)により、重要とされる中間セクションで静圧とエアフロー(P/Q)の曲線が高くなっている。この特性から、静圧とエアフローを必要とするラジエーターなどの冷却機器と組み合わせることで、最も効果的な性能を引き出すことができるという。
冷却ファンはPCから発生する、最も中心的な騒音源。特にヒートシンクやラジエーターからは不快な高音のノイズが発生してしまう。これを最小限にすべく、NF-A14x25 G2シリーズでは微調整が行われており、背圧に逆らった状態で稼働する場面では、スムーズで心地よい周波数と、低い音圧レベル(SPL=Sound Pressure Level)を生成するようチューンされている。
Noctua独自のProgressive Bend impeller(プログレッシブベンドインペラ)は、連続的にRが付けられた合計9枚の羽で構成。ハブの付け根部分では後方にスイープされ、外側へ行くほど前方へ曲げ角度がつけられているのが特徴。次に触れる遠心タービュレーターハブ(Centrifugal Turbulator hub)と連動し、外側のエリアに空気をより多く押し出す力が生まれるという。
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| 出典(https://noctua.at/en/nf-a14x25-g2-aerodynamic-design-innovations) |
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| 出典(https://noctua.at/en/nf-a14x25-g2-aerodynamic-design-innovations) |

遠心タービュレーターハブ(Centrifugal Turbulator hub)は、タービュレーター(Turbulator)として機能。ハブ領域で発生する流れの付着を改善する効果が期待できる。さらに遠心力により低回転時の低効率なハブ領域から、ブレードの外側(高効率領域)へ向けて空気を押し出し、インペラ全体のエアフローを最適化。インペラ全体のエアフロー効率が向上されている。
これもインペラデザインにまつわる項目で、空気を取り込む吸引側のエアフローを加速させるもの。外周に近い領域でエアフローの流れを速めることで、吸引側の流れの分離が減少。結果的に全体的な効率が向上するため、渦流によるノイズを抑えている。
インペラ末端のウイングレットは、圧力差により発生する先端渦の減少が目的。ただし良い事ばかりではなく、高速度領域における流体変位が発生することで効率が低下するリスクもあるという。そこで両者のバランスをとるべく、NF-A14x25 G2シリーズでは微調整により効率向上が図られている。
外観上分かりやすく、NF-A14x25 G2最大の特徴としてフォーカスされやすいのがタイトなチップクリアランス。ブレード先端とフレーム内側のすき間を0.7mmにすることで、すき間からの空気の漏れを極限まで減少させている。

最大のメリットは、ラジエーター等に搭載する場合に顕著に発生する背圧に対し、より効果的に動作する事に貢献している。Noctuaが発表したUltra-tight tip clearanceに対し、他社もこれに追随。"Noctuaジェネリック”なるスラングも自作派たちには一般化され、これをアピールする安価な冷却ファンが流通していることはご存じの通り。決してスムーズではなかった開発の背景から、Noctuaはこれについて"好ましくない状況”と考えているようだった。
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| 「NF-A12x25」シリーズの0.5mmは達成できなかったが、140mmの「NF-A14x25 G2」ではブレードとフレームの隙間をわずか0.7mmで完成させた(参考:2023年COMPUTEX TAIPEI 2023) |
9枚で構成されるブレードには、硬質・軽量な新素材「Sterrox液晶ポリマー」(LCP)を採用。引張強度の高さと低い熱膨張係数に優れ、共振や振動現象の低減に最適な減衰特性を持つ。つまり冷却ファンにとっては非常にマッチした素材という事が言える。ちなみにLCPは、
2017年のCOMPUTEX TAIPEIレポートで、超硬質な新素材として既に解説している。
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| 「Sterrox液晶ポリマー」(LCP)の開発を発表した当時のNoctuaブース(参考:2023年COMPUTEX TAIPEI 2023) |
は、防振パッドとステップ型インレットデザイン、さらに内面微細構造を採用した総称で、冷却ファンのパフォーマンスを最大限に発揮するための重要なベースになる。ちなみにAAOフレームは、これまでのNoctua製品のほとんどで採用されているもの。
直訳では"階段状の入口設計”。ステップインレット設計は、相反する層流と乱流を最適化するもので、スペースの限られた環境での吸気音の低減に効果があり、背景のノイズに溶け込みやすくなる。さらに吸気性能を高める事も期待できるという。
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| 出典(https://noctua.at/en/stepped-inlet-design) |
ブレード先端とフレーム内側のすき間はわずか0.7mm。そしてブレードの吸気側エアフローの分離を大幅に抑えてくれるのが、フレームの内側に設けられた微細構造の存在。加えてブレード通過時の騒音を抑える効果もあり、エアフローと静圧の効率が向上できる。
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| 出典(https://noctua.at/en/inner-surface-microstructures) |
Noctua曰く、NF-A14x25 G2は非常に厳密なレギュレーションのもと、僅かな公差の範囲内で製造された高精度な冷却ファンだ。出荷時はこの状態が保てているものの、ユーザーの使い方によってはそのバランスが崩れてしまう恐れがある。そこでNF-A14x25 G2には、標準で
防振ガスケット(anti-vibration gasket)が装着されている。

主にラジエーターへの装着時に対応するもので、ネジ留めを行う際に過度の負荷が掛かることによるフレームの変形を最小限に抑えてくれるというもの。開発セッションにも詳しいが、フレームの歪み対策用に追加することで、製品化までの道のりを一気に短縮させた。
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| ラジエーター設置面に密着させて固定する防振ガスケット(anti-vibration gasket) |
防振ガスケット(anti-vibration gasket) とセットで吸気側のフレーム四隅に装着されている
防振パッド(anti-vibration pads)は、ネジ留めを行う際の微細な振動を最小限に抑える役割がある。
Noctuaには冷却ファンに関するオプションパーツが多数ラインナップしている。中でもオススメなのが
「NA-IS1-14 Sx2」だ。2022年11月8日にリリースされた吸引用吸気側スペーサーは、ラジエーターの間に挟み込むことで流入乱流を減少。さらにエアフロー性能が向上され、騒音値も低減できるという。
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| 「NA-IS1-14 Sx2」(https://noctua.at/en/na-is1-14-sx2) | |
パッケージは2個入りで、ラジエーター固定用のネジが付属する。余談ながら約20年前の静音ブームの頃、ほぼ同じコンセプトの"冷却ファンアダプタ”がThermaltakeより販売されていた。記憶が正しければアクリル製のスケルトンタイプで、CPUクーラーの冷却ファンとヒートシンクの間に挟むと「なにやら良いらしい」といった、やや漠然としたものだった。NA-IS1-14 Sx2ほど詳細な解説がなく、ほぼオカルト的なアイテムながら試しに購入した記憶が懐かしい。
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| NF-A14x25 G2とラジエーターの間に挟み込んだ「NA-IS1-14 Sx2」。装着に際し、Anti-vibration gasket(防振ガスケット)は取り外す必要がある |