気になる「Scape」の使用感
ここからは「Scape」を実際に装着し、その感触や音質をチェックしていきたい。まず身につけた際に感じたのは、ファブリック生地のイヤーカップやパッドによる肌触りの良さだ。
筆者の場合、アームをまったく伸ばさなくとも十分な程度の頭のサイズもあってか、しっかりしたフィット感がありつつ側圧は控えめ。レザータイプの張り地と比べ圧迫感も少なく、2~3時間ほど使い続けた際も負担に感じなかった。メガネユーザーであることを意識することもなく、良好な装着感は「Scape」の魅力と言えるだろう。
また、ノイズキャンセリング機能はないものの、密閉型のため周囲の環境音程度は問題なくシャットアウト。ほどよくゲームや音楽に没頭できる。もっとも多少の音漏れはあることから、あくまで屋内で運用するゲーミングヘッドセットとして設計されているようだ。
そして音質に関しては、聴き始めてすぐに“良い音”と感じられるクオリティ。「Scape」にはカスタムチューニングされたドライバー(詳細は非公開)が搭載されているが、何か突出して尖った要素があるというより、比較的ニュートラルなサウンドに調整されているようだ。
低域は重厚さにはやや欠けるものの柔らかさがあり、中域は大きめの音でも粗さがなくボーカルもキレイに聴こえる。高域も耳障りに感じることはまったくなく、長時間使用しても聴き疲れしにくい。その分ゲームでも音楽でも、低域を強調する“Depth”プリセットとの相性がいいように感じた。
ちなみに検証の際はUSBドングルを使用した2.4GHzワイヤレスで接続したところ、15msまたは10msで通信できるLC3plusコーデック対応していることから、遅延を意識することはなかった。距離感も把握しやすく、この特徴はゲームプレイ時にも有利に働くはずだ。
|
2.4GHzワイヤレス接続時は、LC3plusコーデックにより24bit/96kHz再生に対応している
|
さらに着脱式ブームマイクによる音声は明瞭で、ゲーム中でもしっかり通話相手に声を届けることができた。ただし「Adjust Pro」で設定できるサイドトーン機能とマイクノイズキャンセリングについてはオマケ程度のようで、あまり効果が実感できず。このあたりはファームウェアの改善に期待したいところだ。
オーディオ製品のようなビジュアルに優れた性能、付属スタンドも便利
「Scape」はFractalによる初のゲーミングヘッドセットであることは冒頭触れた通りだが、実際に試してみたことで、それを感じさせない完成度の高さに驚かされた。長時間快適に身につけられる良好な装着感、さらにゲーミング運用だけでなくHi-Fiヘッドホンとして音楽を堪能することも可能な優れた音質。ワイヤレスながら遅延を気にする必要もなく、ゲーミングヘッドセットとして必要な要素は十分に備えている。
そうした文句なしの性能がありつつ、いい意味で“ゲーミングらしくない”Fractal的なデザインこそ、「Scape」の最大の特徴。ミニマルで格調高いデザインには価格以上の高級感があり、いかにもなゲーミングヘッドセットを敬遠する層にこれ以上なく刺さるだろう。
そして日常における「Scape」の使い勝手を優れたものにしている、充電スタンドが標準で付属する点も見逃せない。外してヒョイと置くだけで充電開始、持ち上げて身につければすぐに使用可能。ケーブルの抜き挿しや電源ON/OFFの手間いらずで、実質的にバッテリ残量を意識することなく使い続けることができる。
また、発売から3ヶ月ほどが経過したことで、価格が多少こなれて2万円台まで下がったことも好材料。十分な性能を備えつつ充電ドック付きでこの価格となれば、コストパフォーマンス面でも大注目なゲーミングヘッドセットと言える。
提供:Fractal Design
株式会社アスク