「Silent-Master PRO」シリーズのキモとなるのは、Noctuaのファンレスクーラーに加えて“T型番”こと低電圧版の第13世代Intel Coreプロセッサを採用する点であることは、冒頭触れた通り。今回はこの組み合わせを採用するに至った理由について、仕掛け人であるサイコムのプロダクトマネージャー・山田 正太郎氏に話を聞くことができた。ポイントとなるのは「T型番のポテンシャルを最大限に引き出すチューニング」だったという。
低電圧版CPUを採用するBTOは珍しいですが、そのキッカケは何だったのでしょうか。
実は以前から低電圧版CPUには魅力を感じていて、ずっと採用BTOを扱いたいという思いがあったんです。それこそIntel CPUの代替わりの度に検討していたくらいなのですが、まとまった数量の確保が難しく入荷タイミングが安定しないなどの問題がありました。それが現行の第13世代になって、正規代理店さんのご協力もあり、どうにか解決できたというわけなんです。
| エルミタではお馴染みの存在でもある、サイコムのプロダクトマネージャー・山田 正太郎氏。念願だった低電圧版CPUを採用したBTOを企画するも、テスト段階で思わぬ苦労に見舞われたという |
これまで長年温めてきた計画があってこそということですね。そして「Silent-Master PRO」については、NoctuaのファンレスCPUクーラー「NH-P1」の存在感も大きい。こちらを採用した理由は?
せっかくの低発熱な35W版CPUですから水冷クーラーという選択は当初からなく、空冷から選ぶことに決めていました。それならいっそファンレスにしてみようかとテストを始めてみると、「NH-P1」の冷却性能が想像以上に高かった。最上位モデルのCore i9-13900Tも余裕で冷却できてしまったんです。
そうなると低電圧版CPUとNoctua「NH-P1」の組み合わせは、テスト段階からまったく問題がなかったと言うことですね。
それがそうでもなく、Core i9-13900Tを使用したテストでもベンチマークスコアが振るわなかったので、やや期待外れといった感じ(CINEBENCH R23スコアで約13,000)でした。もっとも電圧がデフォルトで35Wに制限されているわけですから、当然の結果なんですけど。
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| 低電圧版CPUの発熱の低さと「NH-P1」の優秀な冷却性能に触れたことで、さらなるパフォーマンスの追求にチャレンジすることに | |
そこでCPUのチューニングが始まったわけですね。
その通りです。「NH-P1」の冷却マージンを活かしてもっとパフォーマンスを上げられないか、と試行錯誤を始めたわけですが・・・これが本当に大変な作業でした(笑)。他の業務もこなしつつではあるものの、納得がいくチューニングにたどり着くまで約2ヶ月ほどかかったんです。
どのような苦労があったのか、具体的に教えてください。
冷却性能に余裕があってデフォルトのCPU性能が低いとくれば、パワーリミット(この場合はPL1)の値を上げてやればいいということは分かります。しかし例えば65Wに設定してCINEBENCHのスコアがポンと上がっても、FFXIVベンチを回すとグラフィックスカードの発熱が直上の「NH-P1」に悪影響を与えてしまい、CPU冷却が追いつかずサーマルスロットリングが発生する・・・といった問題が発生しました。
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やはりPCに組み込んだ状態になると、CPUだけでなくグラフィックスカードの影響も考える必要があるということですね。
CPUの冷却性能を維持しつつパフォーマンスを上げるのはそれほど難しくないのですが、一緒に組み込まれたグラフィックスカードに負荷がかかると、まったく状況が変わってきます。PL1を60WにしてPL2も下げてみよう、次はPL1を45Wまで下げてみよう・・・などと“正解”を模索してテストを繰り返す日々が続きました。ベンチスコアと温度も良好で「これでいける」と思った設定でも、1時間の負荷テストではサーマルスロットリングが発生してダメ・・・なんてこともザラでしたよ。
なにやら途中から楽しくなってきていそうな口ぶりですね。
いやはや大変でしたよ(笑)。ただテストを繰り返すうちに少しずつ分かってきたことがあって、今回のT型番は35Wから55Wに上げた際にスコアがグンと上がる。そして55W以降は緩やかにスコアが伸びるという傾向でした。もちろん個体差はあろうかと思いますが、あらためてT型番は奥が深い、面白いCPUだと思います。かつてFSBの周波数を探りながらオーバークロックを楽しんでいた頃を思い出しましたよ。
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こうした苦労の末に、現在の数値に決まったと。これで狙い通りのBTOが出来上がったというわけですね。
最終的にPL1を55W、PL2を106Wに設定することで、最も安定したパフォーマンスが出ることが分かりました。これはCore i9-13900TでもCore i7-13700Tでも同じ、「Silent-Master PRO」のCPU設定はすべて共通のチューニングが施されています。低電圧版CPUのポテンシャルを引き出せたことで、安定したパフォーマンスを発揮しつつさらに静音であるという、シリーズの理念を形にできました。ゲーマーからクリエイターまで、誰にでも自信をもってオススメできる1台ですよ。