トップフローならぬ、ボトムフロー空冷CPUクーラーの「NH-L12Sx77」
まずは説明が必要だろう。今回取り上げる
「NH-L12Sx77」は、2024年4月23日(現地時間)にリリースが配信された、Noctuaの最新CPUクーラー。エルミタでは発表の翌日にグローバルリリースの詳細を記事にしているが、ここでは「ロープロファイル設計のトップフローCPUクーラー」と記されている。
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Noctua「NH-L12Sx77」 市場想定売価84.89ユーロ/74.90ドル(2024年4月23日発表)
製品情報(Noctua)
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だが実際にはヒートシンクに吊り下げられるように搭載される120mmファンは、底面から上方向に風を当てている。よって本来は
「ボトムフロー」と表記すべきだろう。ただしこの表記も自作PC業界では聞き慣れないが、誰もが試みないカタチを製品化かつ実用化させているのが、Noctuaのオリジナリティ。一見保守的で質実剛健な冷却機器メーカーだが、既成概念に収まらず固定観念も取り払う柔軟性も持ち合わせている。このあたりがNoctua最大の魅力だろう。
「NH-L12S」の"slightly taller variant”
NH-L12Sx77にはベースとなるモデルが存在する。その
「NH-L12S」は、
2017年9月20日に発表。両者を見比べるとその外観はソックリで、先ほど勝手に命名したばかりのボトムフローの冷却スタイルも全く同じだ。
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「NH-L12S」は全高70mmのロープロファイル型ボトムフローCPUクーラー。ヒートパイプは4本で、2021年第4四半期以降の流通品は、現行CPUソケットに対応すべくアップデートされている
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しかし側面から細部を見比べていくと、まず全高に違いがある事が分かる。さらに使用されているヒートパイプも既存モデルが4本のところ、新型は6本で2本増強されている。比較的難易度が低い「間違いさがし」のようだが、約6年半で自作PC業界は大きく進化を果たし、これに合わせてアップデートされたのが、NH-L12Sx77というワケだ。
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「NH-L12Sx77」は全高が77mmで既存モデルから+7mm高くなった。またヒートパイプも6本に増強。ただし奥行きは既存品が146mmのところ、新作は131mmになっている
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編集部倉庫から引っ張り出したNH-L12S(右)とのパッケージデザイン比較
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両者を見比べると、全高だけでなくヒートシンクデザインの違いもよく分かる
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ヒートパイプの本数やヒートシンク形状の違いなど、NH-L12Sx77は進化版ではあるものの冷却機器としては全く別モノと言える
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スモールフォームファクタ、Fractal Design「Terra」等に最適化
NH-L12Sx77は具体的なターゲットを挙げて、存在理由をアピールしている。その筆頭がFractal Design「Terra」だ。
2023年6月に詳細検証をお届けした「現代のゲームプレイヤーの自宅からインスピレーションを受けた」とされるベストセラー筐体は、全高77mmまでのCPUクーラーに対応。通気孔仕様のサイドパネルに正対してマウントすれば、まるで専用設計に見紛う理想的な外排気エアフローが構築できる。

さらに
SilverStone「Milo ML12」もCPUクーラーの有効スペースは全高77mmまで。またNoctuaと同じスウェーデンに本拠地を置くLouqeの
「Raw S1」も同じく全高77mmとされ、いずれもNH-L12Sx77の製品サイトには適合モデルとして表記されている。
スペック表に見るNoctua「NH-L12Sx77」
次にスペック表から、NH-L12Sx77の概要を詳しく見ていこう。対応ソケットはIntel LGA1851/1700/1200/115x、AMD Socket AM5/AM4で、コンシューマ向けCPUのほとんどをサポート。対応TDPの代わりに設けられたNoctuaの独自指標、
Noctua Standardized Performance Rating(NSPR)は「100」とされる(NH-L12Sは88)。

また冷却ファン搭載時の外形寸法は、幅128mm、奥行き131mm、高さ77mmで、総重量は520gとされる。ハイエンド志向の大型CPUクーラーを数多くテストするため、520gはずいぶんと軽量に思えてしまう。なお、搭載される冷却ファン
「NF-A12x15 PWM」については、後ほど詳しく解説しよう。
最後にパッケージサイズは、実測で幅約180mm、奥行き約140mm、高さ約145mmだった。