スタックドフィンもさることながら、冷却性能に大きく影響を及ぼすのが受熱ベースプレートとヒートパイプだろう。前者はCPUからの熱を吸い上げ、後者は素早く放熱フィンへ拡散させる重要な役割を果たしてくれる。

銅製でニッケルメッキ処理が施された受熱ベースプレートは、実測で幅約42mm、奥行き約45mm。厚さ約15.5mm(最厚部)といったところ。また上部には、左右にスプリングスクリューが固定されたプレートがネジ留めされている。

受熱ベースプレートに挟まれるように装着されているのが、6本のφ6mm銅製ヒートパイプだ。腐食防止のメッキ処理により、あたかもアルミニウム製放熱フィンと銅製受熱ベースプレート、銅製ヒートパイプは一体に見える。とは言え、冷却性能は見た目の良さだけでは判断できない。肝心なのは、ヒートシンクを形作る構成部品の接合と工作精度であることは言うまでもない。
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| ヒートシンク中央から左右均等に貫通する計6本のヒートパイプ |
アルミニウム(放熱フィン)と銅(ヒートパイプ)は素材としての熱膨張係数が異なるため、経年の熱サイクルにより「嵌合」が緩む可能性がある。進行すれば受熱ベースプレートからCPUの熱を吸い上げ、熱移動を行うヒートパイプが精確に放熱フィンへ熱拡散ができない。このロスを減らす目的から、放熱フィンとヒートパイプの接合部にははんだ付けが行われている。 これはNoctuaも再三言及している冷却機器における基本であり、熱心なエルミタ読者ならご存じの方も多いだろう。長年使用しても冷却性能を維持するためには、見た目だけでは判断がしにくい丁寧かつ確実な製造がキモになっている。

そして4本から6本に増えたヒートパイプは、NH-L12Sの発売当時から進化したCPUの高い熱負荷に対応すべくアップデート。特に熱処理が難しいとされるIntelのターボ・ブースト・テクノロジーを搭載する、スモールフォームファクタ向けには冷却性能を向上させる必要があったという。
NH-L12Sx77に搭載される冷却ファンは
「NF-A12x15 PWM」だ。
グローバル市場でのデビューは2017年5月17日で、120mmサイズの15mm厚モデルは未だにカタログモデルとして販売が続くロングセラーだ。

耐久性を高めるメタル補強されたモーターハブと真鍮製の軸受(SSO2)を採用。回転数は450rpm±20%~1,850rpm±10%、騒音値は最大23.9dBA、エアフローは最大94.2㎥とされる。また吸い込み側の流入を加速させる羽形状も特徴で、騒音と乱流を軽減させるスムーズな吸排気ができる。
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| 入力電力1.27W(最大1.56W)、入力電流0.11A(最大0.13A)で、MTTFは150,000時間とされる |
さらにAAO(Advanced Acoustic Optimization)フレーム設計を採用し、シリコン製防振パッドを四隅に装着。6年間のメーカー保証が付く高耐久もアピールされ、NH-L12Sx77の信頼性を高めている。 なおNF-A12x15 PWMは、NH-L12Sx77のヒートシンクにファンクリップで固定されている。形状は一般的なもので、簡単に着脱が可能。ちなみにマザーボードへ取り付ける際は、一旦NF-A12x15 PWMを取り外して作業を行う必要がある。

さらに大きくアピールされてはいないが、25mm厚の120mmファンへの換装にも対応している。製品資料には「PCケース内部に余裕がある場合」と明記されているが、ヒートシンクの上部に25mm厚/120mmファンを搭載すれば、冷却パフォーマンスが向上できるとある。その場合、全高は102mmになることを覚えておこう。
25mm厚/120mmファンへの換装は、ヒートシンクの上部に冷却ファンをマウントする事で成立する。つまりNH-L12Sx77は、真のトップフロー型CPUクーラーとしても運用できるワケだ。冒頭でも触れたが、そもそもNH-L12Sx77のスタイルは出荷時の状態である「ボトムフロー」だが、付属マニュアルには
「High-clearance mode」への変更に言及されている箇所があった。 これを要約すると、NF-A12x15 PWMをスタックフィン(ヒートシンク)の上部へ移設することで、下部のクリアランスを確保。デフォルトのクリアランスが44mmに対し、最大56mmまで高さが確保できるため、CPU周辺の大型ヒートシンク、または背の高いメモリが取り付けられるとある。
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| 全高92mmのトップフロー型CPUクーラーとしても運用可能。ただしこのスタイルだと、そもそものコンセプトがやや違った方向へ行ってしまうようにも思える |
NoctuaのCPUクーラーには、以前から減速ケーブル
「Low-Noise Adaptor(L.N.A)」が付属している。冷却性能の高さゆえ、CPUによっては冷却ファンの回転数を落とし、さらに静音化できる可能性がある。NH-L12Sx77に付属の
「Low-Noise Adaptor NA-RC7」を接続すれば、最大回転数1,850rpmから1,400rpmへ減速が可能。騒音値も最大23.9dBAから16.8dBAまで下げる事ができる。搭載するCPUの負荷状況による温度の変化を監視し、冷却に余力があれば是非導入したい手軽なアイテムだ。
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| 付属品の「Low-Noise Adaptor NA-RC7」。手軽に冷却ファンの回転数を抑え、静音化ができる減速ケーブルだ |