オールインワン型水冷ユニットを搭載してみる
空冷クーラーにも高性能で見た目にも魅力的な製品が多いが、今回はオールインワン型水冷ユニットを組み合わせてみる。搭載テストには2025年5月に販売が開始された、
MSI「MAG CORELIQUID A13 240 WHITE」を用意した。ラジエーターは長さ277mm(厚さ27mm)で、25mm厚の120mmファン2基が搭載されている。なおポンプ一体型ウォーターブロックの大きさは70.9x69.3x高さ56.98mmとされる。

Mirage 4 ARGBはトップパネルこそ取り外しはできないが、フロントおよび左側面を開放状態にするだけで、組み込みのしやすさは格段に向上。工程が多く、やや面倒なオールインワン型水冷ユニットの取付けもスムーズに行う事ができた。各ケーブルの配線も、要所のスルーホールを最大限活用し、見映えも考慮した最短の露出で組み込みは完了している。ラジエーターとCPUソケットが近いため、ややチューブが長く感じたが、内部に収めることで支障はなかった。

ただし1点気になるのは、CPU補助電源コネクタに挿したケーブルと、MAG CORELIQUID A13 240 WHITEのラジエーター搭載ファンの距離が近く、ケーブルが逃げる場所がほぼ無い点だ。

設計上、120/240mmサイズラジエーターは左サイドパネル側にオフセットした状態でマウントできるが、それでも幅が足りない。マザーボードトレイ背面は電源ユニットの高さ分(ATX規格の86mm)は最低限確保しなければならないため、マザーボード搭載面のスペースは広く確保できなかったのだろう。これを改善するには、PCケース幅を最低でも10mm広くするしかない。
グラフィックスカードを搭載してみる
グラフィックスカードの有効スペースは、公称値で長さ325mmまでがサポートされている。ここにカード長約243mmのNVIDIA GeForce RTX 4070 Founders Editionの搭載を試みた。

搭載後のフロントパネル(強化ガラス)までの距離は実測で約88mm。GeForce RTX 4070 F/Eは"超ハイエンド”ではないが、有効スペースを考えれば適正にも感じる。また2スロット占有デザインであることも好都合で、上段2スロットまでは着脱が容易な「Reusable PCIE Slots」だけに、3段目以降に手を付けずに搭載ができた。もちろん3スロット占有で、有効カード長ギリギリのグラフィックスカードを組み合わせる熱心な自作派もいるだろう。今後増えるであろう作例を楽しみにしたい。
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上2段の「Reusable PCIE Slots」と側面の金属製カバーを外した状態。拡張スロット自体は採用例が増えているブリッジレスではなかった
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総評:Okinos Mirage 4 ARGBの[○]と[×]
まず最初に確認しておきたいのは、Okinosが2024年1月に誕生した新興メーカーであるという事実は、今回の評価には一切影響しないということだ。老舗ブランドであっても、首をかしげたくなるような製品を平然と送り出すことはあるし、海外市場では好評でも日本国内ではまったく受け入れられない──そんなケースも珍しくない。自作PCの世界では、優秀なプロダクトマネージャーとスタッフ、そして(自社工場であればなお理想的だが)製造工場における厳格な品質管理が揃えば、メーカーとしてのキャリアに関係なくヒット製品は生まれる可能性は高くなる。それを踏まえて、Mirage 4 ARGBとはどんな製品だったか。

まず[○]な部分は、やはりコストパフォーマンスの高さだろう。逆回転仕様のARGBボトムファン2基に加え、リア排気用のARGBファン1基を標準装備しており、追加コストを抑えながら“魅せるPC”を手軽に構築できる。もちろん、より安価な同系統のPCケースも存在するが、Mirage 4 ARGBは比較的工作精度が高く、最低限の剛性も確保されており、安心して選べる一台と言える。
一方で[×]な部分は、強化ガラス製のフロントパネル越しに正面から見える、右手縦列のグロメット付きスルーホールの存在だ。3つ並んだこのスルーホールは、マザーボードトレイ背面の裏配線スペースと、メインエリアとをつなぐ重要な経路であり、配線の自由度を高めるうえで欠かせない要素となっている。

しかし、それが常に正面から見える位置に露出している点を、マイナスと受け取るユーザーも少なくないだろう。あえて“裏側”を見せるのも“魅せるPC”の一つのスタイルではあるが、こうした見せ方に抵抗を感じるなら"ケーブルを魅せるドレスアップ”もひとつの手だろう。
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付け加えると2面強化ガラスを外した状態のトップパネルは少々危険。前方の左右は鋭角で、作業中に目測を誤り、おでこに怪我をしたのはここだけの話。この部分の処理は少し考慮した方がよさそうだ
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今回の検証を通じて改めて感じたのは、ピラーレスデザインのPCケースでは、フロントおよび左サイドに強化ガラスを採用したパノラマ構造が前提となっているため、外観デザインに大きな差が出にくいという点だ。「PCケースの本質は内部設計にある」といくら主張しても、やはり最終的な購入の決め手となるのは見た目のインパクトであり、それが優先される傾向は否めない。

すでに充実しつつあるラインナップに、さらに新たな選択肢が加わる流れは、今後もしばらく続くだろう。それだけ、現在のPCケース市場において、このカテゴリがいかに勢いと魅力を備えているかを物語っている。ピラーレスデザインPCケースは、当面のあいだ主役の座を譲ることはなさそうだ。
提供:Okinos
株式会社リンクスインターナショナル