受熱ベースと自社設計ヒートパイプ
次はヒートシンクを構成する受熱ベースとヒートパイプにスポットを当てて行こう。CPUからの熱を吸い上げる受熱ベース部には銅を採用。製品サイトや手元の資料に記述は見当たらないが、最も熱伝導率の高い素材を使うのはCPUクーラーのセオリーだ。

ここで注目したいのが、受熱ベースプレートの厚みだ。実測で約20mm(最大部)と、空冷クーラーとしてはかなり重厚な作りが外観からも見て取れる。そしてCPUとの接触面は一辺約38mmの正方形で、ここにすき間なくφ6mmのヒートパイプが6本配置されている。

このヒートパイプこそが、Hyper 612 APEXの大きな特徴のひとつだ。採用されているのは独自の
「スーパーコンダクティブ複合ヒートパイプ」で、Cooler Masterが特許を取得している高冷却仕様。高い熱伝導効率を実現すべく採用されたこの機構こそが、冷却性能を支える重要な要素とされている。
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受熱ベースプレートへ曲げ角度が異なる3本のスーパーコンダクティブ複合ヒートパイプが、交互にレイアウトされている
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厚さ20mmの受熱ベースプレートに密着して接続されているスーパーコンダクティブ複合ヒートパイプ。隣接するメモリスロットとの干渉を防ぐため片側にオフセットされている
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プラスチック製トップカバーを外した状態から見た、放熱フィン最上部とヒートパイプのレイアウト
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ヒートシンクを側面から見ると、ヒートパイプは4本のようにも見える。しかしこれは、実際には6本のスーパーコンダクティブ複合ヒートパイプが均等に配置され、放熱フィンを貫通するように設計されているため。外観上の錯覚ながら、内部構造は効率的な熱拡散を意識して設計されている。

なお「スーパーコンダクティブ複合ヒートパイプ」については、"最新のハイエンドCPUの熱を、6本の高性能銅製ヒートパイプが驚異的な速さと均一性で拡散”(製品サイト)とあるだけで、一般的なヒートパイプとの具体的な違い等は記載されていない。
120mmファン「Mobius 120P」を確認する
次に搭載ファンの詳細を見ていこう。Hyper 612 APEXには2基の120mmファンが内蔵されている。モデル名は「Mobius 120P」とされ、カタログモデルの
「Mobius 120」とは別モノのCPUクーラー専用モデルらしい。
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排気側に搭載される「Mobius 120」
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軸受けにはループダイナミックベアリングが採用され、静音動作と高エアフローを両立とさせた
圧力最適化ファンを特徴とする。具体的なスペックを見ると、回転数は0~2,400rpm±10%のPWMに対応。ちなみにCooler Masterでは回転数を「0rpm~」と表記するのが慣例で、以前問い合わせたところ「停止状態から始動できる」という回答だった事を記憶している。これ以上は確認しなかったが、突き詰めると解釈としてはやや微妙な印象は拭えないでいる。
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吸気側に搭載される「Mobius 120」
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さておき、騒音値は最大30dBA、風量は最大75.2CFM、静圧は最大3.63mmH2Oで、これをヒートシンクの両サイドに搭載させた。なおフレームの表面にあたるシルバーグレーの部分はプラスチック製で、外観セッションでも触れたとおり、冷却性能には直接関連のないドレスアップ要素となっている。魅せるPC構築に重要な見映えも意識し、製品全体のデザイン性を引き立てる役割を担っている。
なおヒートシンクへの固定は、プラスチック製の枠にあるスリットを用いたスライド着脱式を採用。工具不要で簡単に取り外しができる。