オールインワン型水冷ユニットを搭載してみる
CPUの冷却にはオールインワン型水冷ユニットをチョイスした。MPG VELOX 300R AIRFLOW PZのCPUクーラー有効スペースは高さ165mmまで。ここに高さ83.53mmのウォーターブロックを備えた
MSI「MEG CORELIQUID S360」を組み合わせた。
いつの間にか選択肢が豊富になったMSIのAIO水冷ラインナップの中で、2021年11月に発売された本製品を“最新モデル”と呼ぶのはやや無理がある。しかし、360mmサイズのラジエーターに搭載された3基の120mmファンはLEDを搭載しておらず、イルミネーションを好まないユーザーにとっては十分に選ぶ価値があるだろう。

組み込みやすさはAIO水冷側に依存する部分が多いものの、開口部が広く遮る物がないだけに、2.4型IPS液晶ディスプレイを備えたウォーターブロックも、長尺360mmサイズラジエーターもスムーズに装着できた。
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マザーボード上辺からトップパネルまで約60mm。ラジエーター厚27mm、冷却ファン厚25mmを組み込んだ状態で、EPS12V(8pin)x2コネクタ部も露出できている事が分かるだろう。頑張ればケーブルの抜き挿しもできそう
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長さ336mmのグラフィックスカードを搭載してみる
グラフィックスカードには
MSI「GeForce RTX 4080 16GB SUPRIM X」を用意した。「用意した」とはいっても、これはエムエスアイコンピュータージャパンがチョイスした組み込み用機材のひとつで、3連ファンを備えた「TRI-FROZR 3S」を採用する全長336mmのハイエンドグラフィックスカードだ。PCケース内の有効スペースが400mmあるため、フィッティングには相応しい1枚といったところだろう。

組み込み作業はシンプルで、背面拡張スロット金具を3つ外し、固定ネジ(インチ)を流用してGeForce RTX 4080 16GB SUPRIM Xをネジ留め。12V-2x6コネクタケーブルを接続し、最後に「GPUホルダー」の高さや支える位置を調整すれば、搭載作業は10分足らずで完了できる。
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グラフィックスカードと接触する「GPUホルダー」先端にはゴム製キャップを装着。駆動振動を吸収し、しっかりと"やさしく”グラフィックスカードを支えてくれる
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なお、グラフィックスカード搭載後のクリアランスは、右手フロントパネルまでが約75mm、下方向のPSUシュラウドまでが約60mmだった。説明するまでもなく、全長300mmを超える長尺グラフィックスカードであっても筐体内部には十分なスペースが確保されており、見た目にも余裕をもって搭載できていることがわかる。MPG VELOX 300R AIRFLOW PZをベースにPCを組み込む場合、カードサイズがネックとなって選択肢から外れる心配はほぼないだろう。
総評:MSI「MPG VELOX 300R AIRFLOW PZ」の[○]と[×]
長い検証を終え、率直に感じたのは
「MSIのPCケースが進化している」ということ。MSIは2018年からPCケース部門に本格参入を果たし、これまで計7台の検証を行ってきた。
ラインナップが出揃う前にベーシックな製品を投入できなかったという事情もあったのだろう。これまでのMSI製PCケースは、自作PC市場の主流に合わせて比較的派手なデザインが多かった。MPG VELOX 300R AIRFLOW PZもいわば“魅せるゲーミングPCケース”ではあるが、エアフローを重視した明確なコンセプトと完成度の高い内部設計により、ひと味違う印象を受ける。今回で都合8台目となるMSI製PCケースの検証だが、これには確かな進化を感じた。

そして[○]なところは、広い内部空間と着脱式としたPSUシュラウドだろう。2つ挙げたのは両者は密接な関係にあり、PSUシュラウドを開放状態にすることで内部空間がより広くなる。この状態から組み込みやすさ、特にケーブルの配線作業が格段に楽になり、作業効率がグンとアップする。
「PROJECT ZERO」を推進するMSIにはやや言いにくいが、PSUシュラウドを取り外す事を敢えて選択し、多くのケーブルが行き交う様子を敢えて前面に押し出すPCも決して悪くはない。なにより電源ユニットが露出することで、筐体デザインを魅せることもできる。

欠点が少ないPCケースだが、敢えて[×]なところを挙げるとフロント寄りボトム面に設置された、ドライブ専用ブラケットの固定方法だ。床から約20mm底上げされた形で設置されるブラケットは、四隅の脚がボトム面にネジ留めされている。ただし、奥側の2本のネジは取り外しにくく、再固定もしづらいのが難点だ。
PSUシュラウドの取り外しには、ゴム製ラバー(クイックスナップ)を用いるといった配慮がなされているだけに、ドライブ専用ブラケットについてもスライド式にするなど、もうひと工夫が欲しい。とはいえ、気になる点はこの程度で、やはりよくできた製品であることに変わりはない。
提供:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社