Cooler Master「MasterFrame 600」内部構造チェック
ここからは、アルミニウム製の外装パネルを取り外し、内部構造を徹底的にチェックしていこう。すでにその質感の高さに心を奪われた読者も多いかもしれないが、MasterFrame 600の真価はむしろここからだ。フリーレイアウトを核とした設計が、熱心な自作派たちにどのように受け止められるのか。フレーム構造を基盤とする内部設計の全貌を、余すところなく紹介していく。
マザーボードトレイ
E-ATXからMini-ITXまで対応するマザーボードトレイには、出荷時点でスタンドオフがあらかじめ装着されていた。ひとつずつ確認してみると、マザーボードの位置決めに使われる段差付きタイプは採用されておらず、マザーボードトレイと同色に塗装されたスタンドオフが9本取り付けられている。
またトレイ面には複数の開口部が設けられているが、もちろんこれは軽量化が目的ではない。背面コネクタを備えたマザーボードにも対応するための設計で、ケーブルの露出を嫌った究極の魅せるPCが構築できるベース筐体というワケだ。

なおトレイ右手にはグロメット付きスルーホールが装備された「ケーブルカバー」が装着されている。ATX規格以上のマザーボードを搭載する場合は、これを取り外した状態で運用する事になる。
PSUシュラウド(ボトムカバー)
左サイドパネルに強化ガラスが付く最近のミドルタワーPCケースのほとんどに、PSUシュラウド(ボトムカバー)が装備されている。MasterFrame 600にはスチール製で曲げ部分が丸く、背の高いPSUシュラウドが搭載され、前寄りの側面は3本のネジで塞がれていた。
なお画像からもお分かり頂けるように、PSUシュラウド自体が比較的大型で、内部高は実測で約115mm、奥行きは約260mmだった。
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PSUシュラウドは底面2本、天板のマザーボードトレイ付け根付近の2本でネジ留めされている
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全8段の拡張スロット
拡張スロットは全8段。ミドルタワーPCケースの平均7段よりも1段多い。独立した拡張スロット金具は通気孔仕様で、シャーシにはインチネジで固定されている。なお枠が無い"ブリッジレス”は採用されておらず、グラフィックスカードのVGAクーラーが左サイドパネルと正対する垂直マウントにも対応していない。この辺りはオーソドックスな設計と言えよう。
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ブリッジレス構造には拡張カードのブラケット形状や厚みに柔軟に対応できる“あそび”の効果もあるが、採用は見送られていた
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電源ユニット搭載スペース(その1)
標準装備のPSUシュラウドにより、電源ユニットはケース後方下部にマウントされる。またPSUシュラウド内部の高さは約115mmと、一般的なPCケースに比べて約20mmほど広く、電源ユニットにとってはゆったりとした居住空間が確保されており、配線作業もしやすい設計といえるだろう。

なおPSUシュラウドは取り外しが可能。MasterFrame 600の電源ユニット有効スペースは235mmだが、もしそれ以上のスペースが欲しい場合は、シャーシにネジ留めされたPSUシュラウドを外すという選択肢もある。もっともその状態で運用する人は稀だろう。しかし実際に取り外してみると、通気孔仕様のボトム面がすっきりと姿を現し、実用面というよりは“見た目の好み”であえて選択する人も、案外ゼロではなさそうだ。
(参考)電源ユニットはトップマウントに変更可能
フリーレイアウトが特徴とあって、電源ユニットの搭載位置の変更にも対応している。標準ではもちろんPSUシュラウド内部に収納するボトムマウントだが、マニュアルによるとかつてのPCで主流だったトップマウントへの変更方法が解説されていた。
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全44ページ中、7ページ目から解説されている「CHANGING THE PSU LAYOUT」
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マニュアルでは、全3ページ・全18工程にわたってレイアウト変更の手順が解説されており、その内容はかなり大掛かりだ。要約すると、まずPSUシュラウドの取り外しから始まり、右側面下部のカバー、横軸のバー、マザーボードトレイ、さらにはリアパネルまで順に取り外し、電源ユニットの搭載エリアをリア後方下部から上部へと移設するというもの。使用するネジの数も多く、ネジ穴の位置もわかりづらいため、本稿では作業の実施を見送ることにした。

作業を行わなかったもう一つの理由は、その変更による明確なメリットが見出しにくいためだ。電源ユニットをトップマウントにすると、天板の冷却ファン搭載スペースとトレードオフになるため、エアフロー全体の設計にも影響をおよぼす可能性がある。そこまでして、トップマウントにする必要はあるのだろうか。
MasterFrame 600の製品コンセプトが“自由なレイアウト”にあるのは間違いない。しかし、だからといって実用性に疑問が残るレイアウト変更までをも拡張性の高さとして評価するのは難しい。こうした部分は、冷静に見極めるべきだろう。