アルミニウムをふんだんに使ったフルタワーPCケース
発売日がまだ未定だった段階で編集部に届けられた「MasterFrame 600」だが、紆余曲折を経てついに7月から国内市場での販売が始まった。これまでにCooler MasterのPCケースを何台も所有してきた筆者だけに、この新製品への期待はひときわ大きい。果たして、MasterFrame 600とはどのようなPCケースなのか。
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MasterFrame 600 市場想定売価税込各34,980円(2025年7月18日発売)
ブラック(型番:MF600-KGNN-S00) / シルバー(型番:MF600-SGNN-S00)
製品情報(Cooler Master Technology)
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ここで過去を振り返ると、そもそも「MasterFrame」と言えば、2021年11月に国内販売がスタートした「MasterFrame 700」(型番:MCF-MF700-KGNN-S00)を覚えている人もいるだろう。オープンエアモードとテストベンチモードに対応する変わり種で、エルミタでも詳細検証を行っている。
さすがにターゲットがコアなユーザー層に限られるため、セールス面で大ヒットとまではいかなかったかもしれない。とはいえ、前例のないアイデアを惜しみなく詰め込んだ意欲作であることは、誰もが認めるところだ。Cooler Masterの底力を示した、“記憶に残るPCケース”であることには間違いない。
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“記憶に残るPCケース”「MasterFrame 700」(型番:MCF-MF700-KGNN-S00)
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そして2024年12月6日、Cooler Masterは翌年1月に開催されるCESを前に、
新たな「MasterFrame」シリーズの投入を予告。公式YouTubeチャンネルでは予告動画が公開され、CESの会場では製品版に非常に近いプロトタイプが実機展示された。ラインナップはアルミニウム素材の「MasterFrame 400/600/800」と、スチール素材の「MasterFrame 300/500」とされ、今回取り上げる「MasterFrame 600」の他にも複数のバリエーションが用意される事が判明している。
実機の登場。「ASK★FES 2025」から「COMPUTEX TAIPEI 2025」へ
しばらく時を経て2025年4月、秋葉原UDX 2階 アキバ・スクエアで開催された
「ASK★FES 2025 ~何かが見つかる!世界のPCパーツ大集合祭り~」のCooler Masterブースでいよいよ「MasterFrame 600」の実機が国内で初めて披露された。記事内では「6月発売予定」とあるが、約1カ月遅れの発売は許容範囲だろう。展示機には多くの来場者とメディアからの注目を集め、「久しぶりにCooler MasterらしいPCケース」という声も聞かれた。
そして5月に開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2025のCooler Masterブースには、CESで発表された兄弟モデルも合わせて出展。およそ今年後半の戦略が見えてきた格好だ。
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COMPUTEX TAIPEI 2025のCooler Masterブースで主役級の注目を集めた「MasterFrame 600」デモ機
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最大の特徴は「フリーレイアウト」
外装デザインや、アルミニウム素材によるクールな外観は、MasterFrame 600を象徴する大きなアピールポイントだ。しかし、それ以上に注目すべきは「フリーレイアウト」と呼ばれる独自の内部設計だろう。
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一見にして無限の可能性を感じさせるMasterFrame 600の内部構造
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スペック表を見れば、数値上でも優れた拡張性がうかがえるが、実機を見るとその自由度の高さはさらに際立つ。フレーム内周には多数のネジ穴が用意され、マザーボードトレイ背面(右側面)には縦に2本、横に4本のブラケットが組み込まれている。
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フレーム内周のネジ穴を使い、縦横合計6本のブラケットが交差し、構成パーツの自由な搭載を可能にしている
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実際には一定のルールがあるものの、ブラケットを移動させることで、サイズの異なる冷却ファンやラジエーター、さらにSSDやHDDなどが自在に搭載できる仕組みになっている。例えるなら、そのコンセプトは「有孔ボード」に近い。
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要所にはプレートがネジ留めされている。これらに見られる複数の穴により120mmから200mmファンまでの搭載を可能にしている
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フレーム素材にはアルミニウムが使われており、筐体を支える8箇所の角部はY字型に成型されている。そこから3方向へ伸びるアルミニウム製のバーを、リベットでしっかりと固定することで、高い剛性を誇る頑丈なフレーム構造が実現されている。このようにMasterFrame 600は外観のみならず、内部構造もまったく新しい筐体である事がわかる。
スペック表に見るCooler Master「MasterFrame 600」
実機に触れる前に、MasterFrame 600をスペック表から概要を確認しておこう。対応マザーボードはE-ATXを筆頭に、SSI-CEB、ATX、MicroATX、Mini-ITX、Mini-DTXをサポート。サーバー系からミニPC用基板まで幅広い対応が謳われている。
外形寸法は幅261mmと大型で、奥行きは531mm、高さは544mmといずれも500mmを超え、フルタワーPCケースに分類されるだろう。ちなみに容量は73.6Lという。
なお重量については、なぜかスペック表に記載が無い。ユーザーには必要な情報だが、このモデルに限らず未記載のPCケースは意外に多い。ただし外装パッケージには輸送時の積載計算や関税・輸入手続き上の必要事項として、Net(製品重量)とGross(付属品・緩衝材を含めた総重量)がプリントされている(未記載のパターンもアリ)。それによると、Netは12.21kg、Grossは16.0kgとされる。

そして注目すべきポイントのひとつが、外装に採用された素材だ。MasterFrame 600では、各パネルのほとんどにアルミニウムが使用されており、質感と高級感を兼ね備えている。
古くからの自作ユーザーであれば、Cooler Masterの名を広めた「ATCS」シリーズを思い出すかもしれない。「COSMOS」や「CM Stacker」よりもさらに前の世代に登場し、当時としては珍しく、アルミニウムをふんだんに使ったPCケースとして知られた存在だ。
余談だが、MasterFrame 600の市場想定売価は税込34,980円だ。一方、初代「ATC-100」は2000年の発売当時、300W電源ユニット付きで約48,000円という価格だった。金額に差はあるものの、どちらも“時代を映すアルミ筐体”という共通の魅力を備えており、世代を超えてCooler Masterの代表作として肩を並べる存在になり得るだろう。