オリジナルの水冷グラフィックスカードを手がけて10年以上の実績を誇るサイコムは、日本だけでなくグローバルでも珍しい存在と言える。そのサイコムをもってしてもGeForce RTX 50シリーズの水冷化は難航し、GPUの発表からだいぶ時間をかけて製品化に至った。 その水冷グラフィックスカードの最新版は、どのような構造になっているのか。今回のレビューに合わせてサイコム本社にお邪魔し、ほぼ製品版と同じ構造という、試作用のサンプルを見せてもらう機会を得た。
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| サイコム本社の作業スペースの一角にて、GeForce RTX 5070 Ti搭載モデルの試作品を見せてもらうことに。細部に多少の差異はあるものの、基本的な構造は実際に組み込まれる製品版と変わらない |
まずGeForce RTX 50シリーズの水冷化が難航した理由の一つは、前世代からGPUクーラーのリテンションが変更されたこと。そのため、ウォーターブロックをマウントする治具を再設計する必要に迫られたという、分かりやすい物理的な原因だ。 もう一つはGeForce RTX 50シリーズグラフィックスカードの仕様によるもので、VBIOSがロックされ変更が不可になったことにあるという。従来は電圧を調整することでポンプの回転数を抑えるなど、細かいチューニングが可能だった。そうした調整ができなくなったことで、冷却性能と静音性をうまくバランスさせる難易度が上がってしまったというわけだ。
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| クーラー用のリテンションはだいぶ細長い形状に変わっている。そのほか、VBIOSの仕様変更なども製品化へのハードルになった |
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| 左はメモリの冷却を含め一体になっていた従来のマウント用治具。新世代向けにはメモリ冷却用の銅製プレートが独立したほか、治具も分割された独特の形状になっている | |
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| カード側のクーラーを取り外すと、水冷ユニットのウォーターブロックが姿を現す |
そしていよいよ気になる内部構造を確認する。中核となる水冷ユニットは、大手メーカーのOEM製造も手がけているという、グラフィックスカード用水冷をメインに扱う水冷専業メーカーによるもの。もちろんCPU向け水冷の流用などではなく、小振りなウォーターブロック部分に至っては、サイコムのために設計された特注仕様だ。 それを国内工場に依頼して製作してもらったという、同様に特注の治具を使用してマウント。ウォーターチューブを介して240mmサイズのラジエーターに接続されている。後ほど実機で確認するが、ラジエーターを冷却するファンはNoctua製だ。
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| ウォーターブロック部分はサイコムのグラフィックスカードのための特注品。なお、水冷ユニットを組み込む都合上、カード側クーラーのヒートシンクにも加工の手が入っている |
そのほかカード側の冷却には、ベースとなるグラフィックスカードの3連ファンクーラーを流用。ヒートシンクなどを一部加工して水冷ユニットと融合させ、主にVRAMなどの冷却を担わせている。 当然ながら一連の組み込みや加工の難易度は高く、限られた職人の手によって一台一台がハンドメイドで完成する。部材の調達からしても個人レベルでは不可能な領域であり、こうしたグラフィックスカードを通常のラインナップとしてオーダーできるのは、サイコムならではの強みだろう。
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| BTOメーカーとして初めて実現したGeForce RTX 5080/5070 Tiの水冷化。現在GeForce RTX 5090の水冷モデルも鋭意開発中だ |
また、現時点でGeForce RTX 50シリーズのオリジナル水冷はGeForce RTX 5080/5070 Tiのみなところ、以前より多数の問い合わせが舞い込んでいるというGeForce RTX 5090モデルも今秋の投入を想定して開発が進められている。 GeForce RTX 5090搭載のオリジナル水冷カードには360mmサイズのラジエーターが導入されるほか、さらにグラフィックスカードを覆うメタルケースとモジュラー式のラジエーターを組み合わせた、まったく新しいシリーズも構想中とのこと。新シリーズの具体的なリリース時期は未定ながら、どのような姿と性能になるのかを楽しみに待ちたい。
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| メタルケースを採用した新シリーズは、すでに詰めの段階まで開発が進んでいる。担当者が「多数のメリットがあるが、まず見た目のカッコよさが特筆モノ」と太鼓判を押す出来栄えらしい |